__翌日。



「亜陽君、ちょっといいかな?話があるの」

生徒会の仕事が終わり、渚ちゃん達が帰った頃、私達も帰り支度を済ませ部屋から出ようとした手前。

私は、亜陽君の腕を軽く引っ張り、真剣な表情で彼を見上げた。


すると、何かを感じ取ったのか。

亜陽君は私の目を暫く見据えた後、何も言わずに生徒会室の扉を閉め、会長席の机に腰を下ろす。


「そんな硬い表情しちゃって、どうしたの?」

そして、静かに問い掛ける亜陽君の瞳はどこか冷めていて、益々緊張感が高まり思わず生唾を飲み込んでしまう。

「あのね、急にこんな事言って驚くかもしれないけど……。私お泊まりデート行かない。というか、これから亜陽君ともうデートしない」

「……ふーん。なんで?」

それから決死の思いで話を切り出したのに、予想に反して亜陽君は全く動じることなく、無表情でそう尋ねてきて、今度は恐怖まで襲ってくる。

しかし、ここは決着を付けるまで帰らないと決めた以上、気後れしている場合ではなく。
私は気持ちを落ち着かせるために小さく深呼吸をすると、拳を強く握りしめた。

「好きな人が出来たの。今はその人のことが何よりも大切で。だから、私亜陽君とこれ以上付き合うことは出来ないの」


……言った。

ついに、言ってしまった。


果たして本音を彼の前で話せるのか、ずっと恐れていたけど、何とか伝える事は出来た。


けど、今感じるのは解放感よりも多大なる罪悪感。

彼は彼なりに私を一生懸命愛してくれているのに、一方的な我儘で離れようとするなんて、本当に身勝手極まりないと思う。

でも、もう八神君への気持ちを振り切るなんて絶対に出来ないから、ここはどんな事があってもけじめをつけなくてはと。

そんな強い決意をもって挑もうとするも、やはり後ろめたさは残ってしまい、バツが悪くなった私は視線を足下に落とす。