中は意外にも綺麗に保たれていて、余計な物が一切なく、とてもスッキリしていた。

広さは3LDKと、一人暮らしには大分スペースを持て余す程で、こんな場所に高校生が一人で住んでいると知ったら、きっとこのマンションの住人達もかなり驚くだろう。


一先ず部屋に上がったものの、自分は一体何処に座ればいいのかよく分からず。

その場で狼狽えていると、不意に背後から抱きつかれ、頬に八神君の唇が触れた瞬間、思わず軽い悲鳴をあげてしまった。


「ま、待って。まだ心の準備が…...」

「は?ここまで付いてきて今更何言ってんだ?」

確かに。
彼の言うことに何も反論は出来ない。


…………でも。


「さっきまで白浜さんとしてたくせに、次は私って、いくらなんでも節操無さすぎでは?」

このまま流されるのは私の理念に反するので、せめてもの抵抗を試みる。

「なんか勘違いしてね?俺はあの女とはキス以外何もしてねーよ」

すると、予想外な返答に私は暫しの間言葉を失った。


「............え?だって、白浜さんが......」

「あの女が何言ったのか知らねーけど、俺は一切手なんて出してないから」

それから、反論しようと口を開いた途端、きっぱりと断言されたことに私は狼狽える。


八神君の反応を見た限り、嘘を言っているようにも思えない。


......つまり、私は彼女のはったりにまんまと引っ掛かってしまったと?