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「倉科さん大丈夫?」

「体調平気?なんなら午後も休んでいいよ?」

教室に着くや否や同じ卓球チームの子達が一斉に駆け寄って来てくれて、予想以上の反応に、私は目を丸くする。

「ごめんなさい、迷惑をかけてしまって。体はもう平気なので、ただの足手纏いでしかないですけど、午後は頑張ります」

そして、心配してくれる周囲の心遣いに軽い感動を覚え、私は笑顔でガッツポーズを作った。

「良かった。でも、あまり無理しないで。それと、やっぱり九条君って素敵だよね。倉科さんが倒れた時試合そっちのけで真っ先に駆け付けてくれるなんて、超愛されてるじゃん」

「本当に、あれは完璧な王子様だったよねー。バスケしてる姿もめっちゃ格好良かったし、あんな彼氏どこ探してもそう簡単には巡り逢えないでしょ」

「あ、でも八神君もエグかったー。まさかバスケあんなに出来るなんて全然知らなかったし、サッカーの時も大活躍してたって言うし、彼の能力完璧過ぎない?」

それから、次第に会話は亜陽君と来夏君で盛り上がってきて、その間に挟まされた私はただ苦笑いをするしかない。

どうやら、この球技大会で二人の人気は更に倍増したらしく、特に来夏君の人気は鰻登りのようで、彼を本気で狙い始める女子達が増えたんだとか。


そんな彼と先程まで保健室のベッドでとんでもないことをしていたなんて。

改めて罪悪感に苛まれた私は、ズキズキと痛む胸に思わず手をあててしまった。

とりあえず、お昼を食べる前に亜陽君には無事回復したと伝える為、私は一旦教室を後にする。

そして、保健室に運んでくれたお礼を用意してから会いに行こうと、先ずは購買へ向かうことにした。