「……うう、酷い。酷いよ八神君」
そう思った途端、涙がぽろぽろと溢れてきて、私は両手で顔を押さえながら悔しい気持ちを表に吐き出す。
勿論無理矢理キスをしてきた彼が悪いけど、段々とそれを受け入れ始めていった自分が一番許せなくて。
心のどこかで亜陽君を見返したいという気持ちがあった事実に、ショックを隠しきれない。
すると、八神君は泣いてる私を他所に、はだけたシャツのボタンを黙々と閉めると、制服の上着を手に持ってベッドから立ち上がる。
「世間なんてそんなもんだ。喰われなかっただけマシだと思え」
そして、配慮も何も見せずに冷たくそうあしらうと、八神君はそのまま私の部屋を出て一階へと降りて行ってしまったのだった。