それからどれくらいの時間が経過しただろうか。


ふと目が覚め、微睡みの中、何気なく壁掛け時計に視線を向けると、既に正午前を指していて、予想外の時刻に意識が一気に覚醒する。

体感的にはまだ二、三十分しか経っていない気がしたのに、軽く一時間を超えていたとは。


けど、そのお陰で睡眠不足は少しだけ解消され、コンディションも回復してきたので、とりあえずここから出ようとベッドから上半身を起こす。

そして、ベッドカーテンを開けて先生に声を掛けようと身を乗り出してみると、中は私以外誰もいなかった。

辺りを見渡すと、直ぐ傍に備え付けられているメモ用紙を見つけ、私は体が回復したのとお礼の一言を残す為、近くに置いてあったペンを手に取る。

すると、突然保健室の扉が開き、咄嗟に入口の方へと視線を向けた瞬間。
予想外の人物が視界に映り、私は思わず手に持っていたペンを落としそうになってしまった。


「八神君?なんでここに?」

今試合が終わったのか。
そこには、少しだけ呼吸を乱したユニフォーム姿の彼が立っていて、何故ここに居るのか理解出来ず、その場で唖然とする。 


「体はもう平気なのか?」

そんな私の質問を八神君は思いっきり無視すると、何やら顰めっ面で尋ねてきたので、一先ず首を縦に振って応える。

「うん、大丈夫だよ。それより試合どうだった?」

「二点差で勝った」

一体何故こんなにも不機嫌なのか訳が分からないまま更に質問をすると、今度はしっかりと答えてくれた八神君。

けど、内容とは裏腹に表情はあまり穏やかではなく、私はどう反応すればいいのか戸惑っていると、八神君は何も言わずにこちらへと歩み寄ってきて、ベッド脇に設置された丸椅子に腰掛けた。