「本当にあんたってつまらない女だな。せっかくこうして男とベッドの上に居るのに、何の興味も湧かないわけ?」
それから、一通りサンドイッチを食べ終えた八神君は急に意味深な目を私に向けると、不敵な笑みを浮かべてこちらに詰め寄って来る。
「え、えっと……。何の話でしょうか?」
しかも、何やら妙に妖しい雰囲気を帯びていて、若干身の危険を感じた私は少しだけ後退った。
「きゃっ!」
その時、突然両手首を掴まれたと同時に体が後に倒れ、一体何が起きたのか。
瞬時に状況を理解することが出来ず、大きく目を見開いたままその場で固まってしまう。
「そもそも、黙って男を連れ込む自体どういうことか分かってないだろ?」
けど、そんな様子を楽しむかのように八神君は私を見下ろすと、綺麗な顔を近付けて熱い吐息と共にそっと耳打ちしてきた。
その低くて艶っぽい声に思わずぞくりと背中が震えだし、私は驚いた目を彼に向ける。
「……んっ」
すると、不意打ちの如く八神君は私の唇に自分の唇を重ねてきて、思いがけないキスに一瞬頭が真っ白になった。
「んん、や……がみく……やめ……」
やめてと言いたいのに、八神君は息を吸う間も与えず、まるで私の唇を食べるように何度も角度を変えてキスの嵐を降らせてくる。
その度に唇に八神君の冷たい口ピアスがあたり、体が小さく反応してしまう。
終いには、呼吸が苦しくなって少しだけ口を開いたところ、容赦なく八神君の舌が滑り込んできて、奥に引っ込んでいた私の舌を絡め取ってきた。
人生初のディープキスに拒否反応が出て、咄嗟に彼の体を押し除けようとするも、全くもってびくともしない八神君は、まるで弄ぶかのようにどんどんと舌を深く絡ませていく。
「八神君お願い。もう、やめて」
それから少しだけ息を吸えるタイミングが出来、私は抵抗するために顔を逸らす。
しかし、それを許さないと言わんばかりに、八神君の長い指が私の頬を掴んできて、強制的に視線を合わせられると再びキスの嵐が襲って来た。
顔を背けても無理矢理唇を重ねられ、その度に私の口内を堪能するように八神君の舌が暴れ回る。
そんな深くて激しいキスを何度も何度もされていくうちに、体が熱くなり、呼吸も浅くなっていき、次第に苦しさで涙が滲んできた。
それから、限界を迎えそうになる手前。
ようやく唇が解放され、八神君はゆっくりと私から離れた。
亜陽君でさえも、こんなに激しく長いキスは今まで一度もしてこなかったのに。
ましてやディープキスなんて尚更。
けど、してしまった。
例え不可抗力だとしても、私も亜陽君以外の人と、いけないことをしてしまった。