__一時間後。
”牛ロース、ヒレ肉ステーキ各十五人前、豚トロ十人前、若鶏の三種盛り十人前、ホタテと伊勢海老のグリル焼き十五人前、野菜五点セット十人前、ビール、焼酎、白ワイン、赤ワイン……”
止まらない。
注文票が全然止まらない。
ここのオーダー方法は、お店のQRコードを読み込ませ、各々の携帯で注文するらしいけど。
受信機からは床に到達しそうな程の長い注文票が吐き出され、あまりの多さに私は愕然とする。
テーブル席ではまだお酒を飲んでいないのに、お客さん達の大きな笑い声が厨房にまで響いてきて、既にこの時点で怖気付いてしまった。
「美月はビールとワイン用意して。それ以外の飲み物は全部俺がやるから」
「は、はい!」
一方、八神君はとても落ち着いた様子で黙々とカクテルを作る準備を始めたので、とりあえず言われた通り、私は冷蔵庫からお酒を取り出す。
これまで、お酒なんて注いだことないけど。
ビールはどうやれば綺麗な比率の泡が出来るのか、全く分からないけど。
なんなら栓抜きすら使ったことないけど。
それでも、やらねばと。
私は四苦八苦しながら見ようみまねで、グラスを用意して各お酒を準備していく。