「それじゃあ、改めまして。俺は二階堂翔今日一日よろしくね」
「倉科美月です。足手纏いでしかないですが、精一杯頑張ります」
開店一時間前。
私は緊張した面持ちでお店の扉を開けると、待ち構えていたように茶髪男性が笑顔で出迎えてくれて、軽く自己紹介をした後、厨房の奥へと案内してくれた。
「そこにあんたの作業着置いてあるから、事務室で着替えてこい」
すると、厨房で仕込みをしていた店長はにこりともせず、ぶっきらぼうにそう言うと、カウンターの方を指差した。
「店長、もっと愛想良くしないとダメじゃないですか。だから毎回女の子達が逃げて……」
「いいから、お前は黙って働け」
その一部終始を見ていた二階堂さんは不服な面持ちで指摘してくれたけど、店長の厳しい一言により呆気なく撃沈。
「......ねえ。毎度思うけど、ここの人達俺に対して辛辣過ぎん?」
そして、項垂れながら耳打ちしてきた二階堂さんが、とても気の毒に思えて。
私は苦笑いを浮かべながら彼に同調した。