「……まったく。たまに発揮するその謎の行動力は一体なんだんだよ」
暫く黙って私達の話を聞いていた八神君は、私と目が合うと、呆れたように深い溜息を一つ吐いてきた。
「ごめんなさい。また迷惑をかけて」
八神君に指摘されて、段々と冷静になっていく思考回路。
これは人助けでもなんでもなく、反発心によるただの独りよがりの自己満足でしかないのはよく分かっている。
でも、イベントの時もそうだったけど、働くことによりもっと自分の価値を見出せそうな気がして。
人に言われたことしかやらない自分を、少しでも変えてみたくて。
八神君に触発され続けた結果、気付けば考えるよりも先に行動に出てしまった。
「そういう意味で言ったんじゃねえよ。ただ、少し感心しただけ」
「え?」
すると、意外な言葉が彼の口からポロリと溢れ落ち、何かの聞き間違えかと思った私は、もう一度尋ねようとした途端。
八神君は切った食材を手にすると、足早に厨房の奥へと行ってしまったのだった。