「とりあえず話は戻すけど、バイトはダメだよ。変な男に寄り付かれる危険があるし」

すると、亜陽君はこれ以上追求することなく、あっさり私から手を離すと、やんわりとした口調で私の要求を一刀両断してきた。

「それに、美月は俺のお嫁さんになるのが夢なんでしょ?俺が美月を守るから、君は何も考えずに全て俺に委ねればいいんだよ」

それから頭を優しく撫でると、一語一句想いを込めるように耳元でゆっくり語り掛ける。

それは、催眠術のような。麻薬のような。
いつにも増して甘く蕩ける声が、私の体にじんわり染み込んで脳を麻痺させる。


そして、悟った。


私の世界は、全て亜陽君の掌の中だと。