暫く走り続けて、そろそろお互いのスタミナが切れ始める頃。
会場から少し離れた広場に辿り着いた私達はその場で一息つくことにした。
「見苦しい所を見せてしまって、本当にごめんなさい」
そして、渚ちゃんの呼吸が落ち着いたタイミングで、恐る恐る彼女に一歩近づく。
彼とのキスを見られた以上、下手な言い訳をするつもりはなく。
ここはひたすら謝るしかないと心に決めた私は、深く頭を下げるも。
渚ちゃんは一向にこちらを振り返ることなく口を閉ざしたままで、私は小さく肩を落とす。
やっぱり失望させてしまった。
当然といえば当然だろう。
心から慕っていた人の裏切り行為を目撃してしまったショックは、私も痛い程よく分かるから。
だから、例え渚ちゃんが私を拒絶しても謝罪だけはしたくて、何をすれば償いとなるのか必死に思考を巡らしてみる。
「こんな淫らな私なんて見たくなかったですよね。なので、気が済むまで罵って頂いて構いません。私自身もそう思っています。もう顔も見たくないのであれば、副会長の座を降りることも覚悟していますので……」
なので、思いつく限りのことを並べて彼女の返答を待っていると、暫くして、ようやくこちらの方を振り向いてくれた渚ちゃんは今にも泣きそうで。
その表情に胸が苦しくなり、私まで涙腺が緩み出してくる。
「……確かに、かなり驚きましたし、ショックではあります」
それから、ぽつりぽつりと胸の内を明かす彼女の言葉一つ一つをしっかりと受け止めながら、私は小さく拳を握り締めた。
「でも、違うんです。私は倉科副会長を軽蔑するとか、そんなことは断じて考えていません!」
すると、今度は覚悟していた言葉とは違う内容が返ってきて、面を食らった私はポカンとした表情で彼女を見返す。
「……え?あ、あの渚ちゃん遠慮はしないで下さい。私は渚ちゃんの正直な気持ちが聞きたくて……」
「遠慮なんかしていません!そもそも、倉科副会長は真面目過ぎるんです!というか、自分を縛り過ぎです!」
ここは変にフォローされるよりは、ありのままの気持ちをぶつけて欲しくて懇願したところ、何故か意図しないところで怒られてしまい、またもや言葉を失ってしまう。
「生徒の模範となるように日々努力しているのはよく分かります。あと、九条会長の婚約者として常に自分を戒めているのも痛い程伝わってきます。それこそ、自分を犠牲にして全身全霊で会長に全てを捧げているくらいに。一体私を何だと思ってるんですか?私がどれだけ副会長のことを見ているとお思いで?」
そして、更に捲し立てるようにこれまでの自分を見事言い当てられてしまい、もはやぐうの音も出ない。