こうしてお店側の承諾を得て、私達は予備のエプロンを借りて露店の中へと案内された。

どうやら、話を聞いたところによると、先程の従業員の火傷具合は思いの外酷かったようで、このまま近くの病院に連れて行く流れとなり、暫く帰ってこれないらしい。

その間は売り上げが落ちてしまうし、材料も余ってしまうので、寧ろ猫の手も借りたいくらいなんだとか。


一先ず焼き担当は全て八神君に任せて、私達は受付や材料を切ったり、容器を用意したりと。特に技術を要しない簡単な作業を担うこととなり、営業が再開された。


「……うう、煙が目にしみる……」

肉を一口大に切り分けている最中、八神君の隣では目に涙を浮かべながら必死に出来上がった肉の箱詰めを行なっている渚ちゃん。

結果的に彼女を巻き込んでしまい、大変申し訳なく感じた私は作業を中断して彼女の元へと近寄る。

「渚ちゃん、交代しましょう。ここならあまり煙も来ませんし。というか、無理しないでください。これも全部私の我儘でやっていることなので……」

「いえ。見目麗しい倉科副会長を煙まみれにさせるなんて言語道断です。それに、副会長がやりたい事であれば、私も喜んでお付き合い致します!」

「おい。さっきからこの女なんだよ。大分頭イカれてるな。あんたの僕か?ていうか、洗脳でもされてんのか?」

それから、フォローしようとしたところ、即断られた挙句、傍から八神君の辛辣なツッコミが入り、ここは大人しく引き下がることにした。

そうこうしている間にも、次々と行列が伸びてきて、その内会話をする余裕もなくなり、私達は各々の仕事に集中する。

初めはお肉を切るのにもたどたどしかったけど、数をこなしていく内に徐々に慣れてきて作業スピードが上がり、渚ちゃんも耐性が出来てきたのか。あまり弱音を吐かなくなってきた。