「ちょっと、うちの麗しい副会長に何て口を聞いてるんですか!?てか、私達今お客さんなんですけど!?」

「んだよ。さっきからごちゃごちゃ五月蝿えな。買わないならさっさと列から外れろ」

すると、すかさず渚ちゃんの怒号が飛んできて、流石の八神君も今度は反応を示し、女子だろうが関係なく鋭い睨みを効かせてきた。

「うう……。怖いけど、イケメン過ぎる。無駄に顔面良すぎて、不覚にもときめいてしまう自分が腹立たしいです」

どうやら渚ちゃんには効果覿面だったようで、一瞬にして勢いが萎むと、こちらに寄り添ってきて小声で泣き言を溢してきた。

「とりあえず、ここのお勧めを一つお願いします」

何はともあれ、折角ここまで来たのだから何か注文しなければと。
特にメニューを考えていなかったので、私は全て八神君に任せることにした。

「あー、それなら牛ハラミが人気だから、それでいいか?」

「うん」

それから、相変わらず八神君の愛想ない態度に若干もやつきながらも、一先ず私は笑顔で首を縦に振った。


やはり、彼の考えていることは未だ全く分からない。

料亭で会った時は頬キスをして名前まで呼んできたくせに、まるでそんな事は始めからなかったような振る舞いに、頭の中が少しだけ混乱してくる。

けど、あの時のことは私も忘れたいので、寧ろその方が好都合かなと。
そう結論に至ると、お肉が焼き終わるまでの間、私は彼の働きっぷりをまじまじと観察することにした。