__そして迎えた、祝日。


いわし雲が均等に並ぶ真っ青な空の下。
仄かに漂う金木犀の香りを堪能していると、背後から肩を叩かれ、私は咄嗟に後ろを振り返った。

「倉科副会長お待たせして申し訳ございません!せっかく家を一時間も早く出たのに遅刻だなんてなんたる不覚っ!」

「大丈夫ですよ渚ちゃん。待ったと言ってもまだ五分も経っていませんから」

どうやら電車が遅延していたようで、激しく悔しがる彼女を宥めようと私はそっと肩に手を置く。

「いえいえ、崇高な倉科副会長に無駄なお時間を取らせるなんて、それは一秒でも罪なことですから」

しかし、即座に返ってきた相変わらず信仰心強めな渚ちゃんの気迫に負けて、私はそれ以上言葉が出なくなってしまった。

何はともあれ、彼女とこうして出掛けるのは初めてのことで、いつも学校でしか会っていない分、とても新鮮な気持ちになれる。

「倉科副会長は私服も素敵ですね。髪も珍しくポニーテールですし、普段のスカート姿もいいですけど、パンツ姿もとってもお似合いです!」

「ありがとう。渚ちゃんのショートパンツとニーハイ姿も凄く可愛らしいですよ」

すると、早速いつもの過激なリスペクトが始まり、段々とそれに順応してきた私は、負けじと彼女を褒めちぎる。

こうして、たわいもない会話が続き、気付けばあっという間に到着したグルメ会場。

そこは街中にある大きなスタジアムで、既に入り口手前から混雑しており、あまりの人の多さに私は暫しの間呆気に取られてしまった。
 

あれからお肉グルメ選手権について色々検索してみると、どうやら数年前から毎年行われているイベントのようで、全国各地のお店が集まり、お手頃価格でお肉を提供するため、毎度かなりの人気らしい。

仕組みも会場内は値段が一律のようで、始めに食券を好きな枚数分買い、後はお店に渡せばいいだけという、とても簡単なシステム。

量も嗜む程度の少量で色々と店舗を回ることが出来、まさに肉好きにはもってこいのイベント。

しかも、投票も出来たり、最後には授賞式があったりと。

他にも様々なイベントがあり、まるでフェスティバルような盛り上がりに私も段々と心が躍りだす。