あれから八神君の存在を頭の中から消し去ろうとしたけど、少しでも気を緩めると考えてしまうため、この乱れた自分を正すためにも。

生徒会副会長という立場を守るためにも。

心を入れ替えるためには、先ずは身の回りの整頓という結論に至り、掃除から手をつけてみたけど敢え無く失敗してしまった。


やはり、ここはもっと別のやり方でやるべきか。

いっそのこと山に篭って滝に打たれるべきか。

次第に思考がエスカレートしていく中、ふと我に返った私は一先ず冷静にならねばと。密かに深呼吸をして、掃除用具を片付け始めた。


「そういえば、副会長は今度の祝日予定はありますか?」

すると、期待に満ちた眼差しを向けて唐突に尋ねてきた渚ちゃんの質問に、私は動かしていた手を止めた。

「えと……。いいえ、特にありませんよ」

それから、直ぐにスマホを取り出してスケジュールを確認すると、丁度予定がない日だったので、私は笑顔で首を縦に振る。

「それでは、一緒にここ行きませんか!?」

その直後。
渚ちゃんの目がこれでもかと光り輝き、突然目の前に掲げられたスマホの画面に注視すると、そこにはポップな字体で大きく“お肉グルメ選手権“と記載されていた。

「何人か声を掛けてみたんですけど、皆予定があって。でも、私お肉大好きだからどうしても諦めきれなくて。なので、もし倉科副会長がよろしければ、是非ご一緒して頂けると嬉しいです!」

そう力みながらぐいぐいと迫る渚ちゃんの気迫に若干押されながらも、こういう場所は初めてなので、段々と興味が湧いてきた私は今度は大きく頷いた。

 
これまでずっと悶々としていた日々を送っていたので、これがいい気分転換になりそうで。

私は渚ちゃんに感謝すると、早速遊ぶ約束を取り付けた。