「ちょっと、来夏どこ行くの？まだ話終わってないんだけど？」

いや。
マジでうざ過ぎるだろ。

こいつどこまで付いてくるんだ？
下手したらストーカー一歩手前だぞ。

さっきから全く相手にしていないのに、未だ諦めよとうとしない女の執念にドン引きしながら、そろそろ本気でこいつを突き放そうとした矢先だった。

向かいから歩いてくるある人物が視界に映り、思わず進めていた歩を止める。

そのまま気にしないで通り過ぎればいいものの。

どうもこいつの顔を見ているとむしゃくしゃして、つい絡みたくなる。


「よっ。最近よく会うな？美月とは相変わらず順調か？」

だから、挑発的な態度を取ったら、一瞬だけ九条の眉がぴくりと動き、張り付いた笑顔をこちらに向けてきた。

「お陰様で。あれから君が何をしようと、俺らの関係性は何も変わらないってことを再認識したよ」

そして、向こうも俺の挑発に乗り、刺々しさを露わにしてきたので俺は不敵に笑ってみせた。

「それは良かったな」

それから、皮肉たっぷりの返答をすると、そのまま九条の横を通り過ぎ、何事もなかったようにその場を離れた。