先程の優しくて甘いキスとは全然違う。
呼吸する間も与えず、貪るように何度も角度を変えながら食らいついてくるような激しいキス。

「亜陽君待って……。苦し……」

少しだけ勢いを抑えてもらいたくて弱々しく訴えてみるも、受け入れてもらえる気配は全くなく。
その代わり容赦無く舌が侵入し始めてきて、余計に息苦しさが増していく。


やっぱり怒らせてしまった。
私が油断していたばっかりに。

しかも、私は亜陽君の許嫁なのに、彼の前で八神君を意識してしまった。

だから、この苦しさも全部自分のせいだ。


そう確信すると、私は抵抗することをやめて亜陽君のされるがまま肩の力を緩める。

「美月、今ここで上着全部脱いでくれる?」

すると、それを見計らったように亜陽君は真っ直ぐな目でとんでもない要求をしてきて、一瞬思考回路が停止してしまう。

「……あ、亜陽君。流石にここでは。それに、お店の人に見つかちゃうかもしれないし……」

普段は制服のボタンを途中まで開いて済んでいたのに、まさかこんな場所で辱めを受けるとは思いもよらず。

抵抗しないと決めたものの、流石にこの要求はすんなりと呑むことが出来ず躊躇っていると、不意に亜陽君の長い指が私の髪に絡みついてきた。

「そうだね。でも今知りたいんだ。美月はどれだけ俺のことが好きなのか」

それから、何処か物悲しそうな表情で訴えてくる亜陽君の最後の一言が胸に深く突き刺さり、私は図るようにこちらを眺めてくる彼の目をじっと見返す。

そして、それ以上口を開くことはせず、余計な雑念を全て払い落とし、洋服の上着に手をかけた。

羽織っていた厚手のカーディガンを脱ぎ、ブラウスのボタンを全部外し、最後に着ていたキャミソールも脱ぎ捨て下着一枚の姿になると、これまで隠されていた身体中に刻まれた彼の印が全て顕になる。

その一部終始をとても満足気に眺めていた亜陽君は小さく微笑みを見せた途端、胸元に唇を落としてきて、そこからいつものマーキング行為が始まった。

しかも、今回は上着を全部脱いでいるので、普段は届かない二の腕やおへそ周りや脇腹だったり。

露出している部分全てを網羅する勢いで亜陽君の唇が体を巡り、どんどん蓄積されていく疼きと、甘い痺れが止めどなく襲いかかってきて、頭がどうにかなってしまいそうになる。