本格的な秋の訪れを感じ始めた今日この頃。
それなのに、気付けばあっという間に冬の寒さが目前に迫って来ていて、丁度いい季節はほんの少ししか居てくれない。
特に太陽が一日中隠れている日なんて、季節はまだ十一月の下旬だというのに、街の景色は寒々しく、吐く息に色が付く。
「美月もっとこっち来なよ。寒いでしょ?」
まさか今日がここまで寒くなるとは思ってもいなかった為、手袋も何も付けていない悴んだ手を擦っていると、見兼ねた亜陽君が私の冷えた手を握って引き寄せる。
「ありがとう亜陽君」
そんないつもと変わらない彼の優しさに今日も胸を高鳴らせながら、私はここぞとばかりに亜陽君の隣にそっと寄り添った。