最低だ、あんな奴。

走りながら、さっきの男の顔を思い出す。

顔はすごく似ていたけど、あんな自分勝手なやつは綾川なわけが無い。

そう、綾川なわけが、、、

「あれ?」

全力疾走していた私は、はたと立ち止まった。

いや、綾川なわけがあるかもしれない。

そもそも綾川は割とあんな感じの人間だった気がする。

というか綾川が自分勝手じゃなかった時なんてあっただろうか?

恐ろしいことに、この2年間で私の綾川に関する記憶が美化されているようだった。

2人の楽しい日々ばかり思い出して涙に暮れていた時期もあったが、よくよく考えれば初対面で土下座を強要してきた器の小さい男だったではないか。

「け、汚されていく、、、私と綾川の思い出が、
綾川によって汚されていく、、、」

うおおおおと頭を抱え、しゃがみ込む。

こんな形で再会することになるなんて、一体誰が予想しただろうか。

「最悪だ、、、」

1人呟いた私の声はフワフワなカーペットに吸い込まれていった。