消えそうな声でそう呟いた彼に、私はますます動揺する。

「、、、幻覚、、、?」

緊張が限界まで達したことで綾川の幻覚が見えたのだろうか?それとも幽霊??

にしてはやけにリアルで、しかも成長しているように見える。

「幻覚なわけ、、、ってうわ!」

私に1歩近付こうと足を踏み出してきた(幻覚の?)綾川はぐしゃりという音と共に、私の手から滑り落ちたアイスをその靴で潰してしまった。

見るも無惨な姿になったアイスを見て、私は思わず叫んだ。

「何するの!!?」

慌てて飛び退いた綾川の足元からアイスを拾い上げ、私は絶句する。

とても食べれるような状態ではない。

「お、俺悪くねーだろ!」

そんな私の様子を見て綾川がそう怒鳴った。

「むしろ靴が汚れたんだから被害者はこっちだ!!」

ピカピカ輝く革靴に飛び散ったアイスを指差す彼に、私は心底呆れてしまう。

「ひどい!よくもそんな非人道的なことが言えたもんだわ!あんたみたいなクズ、綾川じゃない!」

そう言い残して、私はアイスの亡骸を抱え、その場から走り去った。