「ただ、、、」という言葉から表情を曇らす京極くんを見て身構える。

「湊が留学するらしいんだ。紬ちゃんには言わないでほしいって言われたけど。もう今日の午後に発つ予定だって」

「留学って、、、え、、?」

京極くんの言葉を頭の中で反芻する。

留学。

あの綾川が?

とても信じられなくて、何と言えばいいか言葉に詰まった。

「冗談じゃないよ。会いたいなら、行かないともう間に合わない」

京極くんが自身の左手首につけている腕時計を私に見せた。

1時半すぎ。

「3時発の飛行機なんだ。ここから空港まではどれだけ急いでも1時間以上かかる」

頭の中にずっと、綾川の顔が浮かんでは消えていく。

私に言わないでほしいってどういうこと?
もう私とは会いたくないってこと?
そんな状態で空港まで駆けつけたって、、、。

「どうしよう、私、、、」

「会いたいなら、相手の都合なんて無視して押しかけていいんだよ。紬ちゃんが後悔しないことが1番大事なんだから」

「京極くん、、、」

行動だけでなく言動までスマートなんて、、、
そんな京極くんの優しさに涙が出そうになる。