人と人との隙間を縫うように2人で走る。

何度か誰かの腕や足が当たって転びそうになったけど、その度に綾川が助けてくれた。

部屋を飛び出ると、電気がついていて明るく、目がチカチカした。

「わっ!」

視界が急に明るくなったことで目眩を起こし、体がよろける。

「おい!」

綾川が私の腕をグッと掴み、引き寄せる。

「まだ誰も追って来なさそうだからおぶってやるよ。早く乗れ」

そのまましゃがんで私に背を向けた。

「え、で、でも、、、」

「いいから早く!」

グズグズしていても仕方がないと思い、綾川の背中にしがみつく。

「よし。走るぞ」

立ち上がった彼のいつになく優しい声に、私はホッとしてまた身体中の力が抜ける。

綾川の背中がこんなに広いなんて知らなかった。

きっと隣で並んでいるだけじゃ分からないことも、沢山ある。

綾川のことをもっと知りたい。

そう、その時強く思った。