「ありがとう、確かに疲れてたのかも」

バルコニーに着くと、気持ち良い夜風が私の頬を撫で、幾分か気分が良くなったように思えた。

「どういたしまして。俺、まだ紬ちゃんと話したいことがあったんだ」

「私と?」

綾川関係のことだろうか。
私もさほどアイツについては詳しくないけれど。

「うん。もし紬ちゃんさえ良ければ、俺の商品開発を手伝ってほしいと思って」

「、、、え?」

商品開発???

私も大人になれば社会に出て働いて、商品開発に携わる機会もあるかもしれないが、現在高校生のこの身にはあまり聞き覚えのない言葉だった。

「さっき紬ちゃんから沢山ダメ出しされたりアドバイス貰ったりして、俺の作りたいアイスクリームがだんだん具体的に思い浮かべれるようになったんだ」

何かのドッキリだろうか​、、、?​
あまりにも唐突なお誘いに私の思考はストップ​する。​

「だから、紬ちゃんに俺とアイスクリームを作ってほしいんだ!」

綾川と話していた時の大人びた態度は打って変わって、熱く私に訴えかける彼のその表情はとても真剣だった。

「どうかな、、、?」

私の両手を握り、期待に満ちた目で見つめてくる彼に何と言葉を返したら良いかわからず、黙り込んでしまう。

​「ごめんね、急な話で。でも俺は紬ちゃんとなら本当に最高のアイスクリームを作れると思うんだ」

その声に、私は「確かにいいかも、、、」と気持ちが傾いていた。
考えれば考えるほど、私にとって損は無い。
きっとアイスクリームが食べ放題な毎日が待っている。

「あ、私、、、」

「おい!!お前ら!!!」

私の一世一代の1歩を邪魔するかのように、聞き覚えのある怒号が響き渡った。