結局そのあと、私は綾川に半ば強引にアイスのブースから連れ出されてしまった。

まだアイスを楽しみたかったというのに。

去り際、綾川がよそ見している隙に京極からLI〇E交換を申し出られたため、理由もよく分からないままとりあえず交換する羽目になった。

「何度も言うが俺から離れるなよ。変な奴に連れていかれるかもしれないんだからな」

ため息混じりに綾川にそう言われてムッとする。

「変な奴って?返り討ちにするから大丈夫よ」

「その自信はどこから来るんだよ。別に大人しく俺の横で料理食ってりゃいいだろ?」

そんな綾川の正論に、私は返す言葉もなかった。まさか綾川に正論を言われる日が来るなんて、、、。

「で、でも綾川が忙しそうに他の人と話してたから私邪魔なのかなって思っただけだし、、、」

しかし言われっぱなしでは気が済まないので、こちらも精一杯の言い訳を並べてみる。

「あんまり適当に相手するわけにもいかないだろ。できるだけ早く済ませようとはするよ」

「、、、ふーん」

まるで私が子供であるかのようなその口調に少し苛立ちはしたが、黙ることにした。

それにしても今日の綾川は妙に大人びていて扱いづらい。

それとも私の見ていた綾川が異常で、この綾川が本来の姿だと言うのだろうか。

そんなことをグルグルと考えていると、すぐ近くで女の子の声が聞こえた。

先程会場に入る前に出会った女の子達とは違う人達だ。

「ねえ、あれ湊さんじゃない?」

「ほんとだ!私、先月のパーティーで少しお話したから覚えてもらってるかも、、、」

「声かけに行ってみる?」

少し控えめな声量ではあるが、充分内容が聞き取れた。

家柄や顔がいいと、相手にしなければならない人の数も増えるのだということを今日だけで私はしっかりと学んだ気がする。