たっぷり30分は改善点について指摘しただろうか。

ハッと気がついたときには、彼の目は死んでいて何処か遠くを見つめていた。

「あの、聞いてます?」

暇だったとは言え私がせっかく時間を割いてこのアイスについて語ってやっているのだ。

メモをとる勢いで熱心に聞くのが誠意というものではないだろうか。

「も、もちろん聞いてるよ。確かに君の言う通りで改善点ばっかりだな。参ったよ」

苦笑いしながらそう言われた。本当に聞いていたのだろうか。

「でも、グレープフルーツ味のアイスという発想自体はなかなかいいと思います。珍しくて」

先程からずっと厳しいことばかり言っていたので、アフターケアをしなければと優しい言葉をかけてみる。

「ありがとう、とても参考になったよ。それにしてもそんな量の知識、どこで手に入れたものなんだい?」

「どこでって、普段からたくさんアイス食べてるので、自然と、、、?」

当然のようにそう言うと、彼は先程の私のように目を丸くした。

「自然とその知識が身につくなんて、才能あるんじゃないかな。もしよければ、、、」

何かを言いかけた彼の声を遮るように、2人きりだったブースに誰かが大声を上げながら入ってきた。

「おい、紬!こんなとこで何してんだよ!!」

驚いて振り返ると、数十分前に別れを告げてきた(?)綾川だった。