しかし、次の瞬間、そんな私の不安を掻き消すほどの大きな声が聞こえ、思わず飛び上がった。

「そんなはずない!俺が作ったアイスなんだよ!」

「えっ、、?」

その衝撃発言に私は目を丸くする。

私と同い年くらいに見える彼が、商品化できるようなアイスを作っているのか。

私が固まっていることに気づいたのか彼は咳払いをして再び話し始めた。

「ああ、ごめん。取り乱しすぎたよ。俺のこと、知らない?大手のアイス会社の社長の息子なんだ。これも商品化する予定で、、、」

し、知らない、、、。

綾川にしろこの男にしろ、私は金持ちの名前や顔なんていちいち把握していない。

「商品化、、、ですか」

このアイスを??と言ってしまいそうになったが、すんでのところで思いとどまった。

「そう。まあまだ試作品なんだけど、親父に頼みこんでここに並べてもらったんだ。食べてくれたのは君が初めてだったからつい声かけちゃって」

チャラそうな外見に反した丁寧な口調に、つい見た目で判断してしまったことを申し訳なく思った。

「そうなんですね。あの、一応お聞きしますが何味のアイスなんでしょうか」

「グレープフルーツ味だよ」

なるほど、、、。柑橘系の味だとは思ったが、少しもグレープフルーツの良さが活かされていない。

「実は不味いって言ったのは君が初めてで、、、良かったらアドバイスを聞きたいんだけど、今時間あるかな?」

なに!?

不味いと言われたのは初めて、、、?

今までどんな人にこの試作品を食わせてきたのだろうか。

「あ、はい、まあ」

どうせアイスを食べて時間を潰そうと思っていたし、丁度いいかと思ってそう答えた。そして先程食べたアイスの味を思い出しながら口を開く。

「まず食感がだめ。ちっともなめらかじゃない。後味も苦いし、グレープフルーツの爽やかさが少しもない。見た目も少し地味だしそれに、、、」

つらつらと語り始めた私の前で、彼は分かりやすく固まってしまった。