「ねえ」

いざ口に運ばんとしたその瞬間、予期せぬ邪魔が入ったせいで手を止める。

さっきまでこのブースには私一人しかいなかったと言うのに。

私の至福のアイスタイムを奪わないで欲しい。

「何ですか?」

できるだけ不機嫌な声にならないように気をつけながら、声が聞こえた方向を向く。

「そのアイスどう?美味しかった?」

声をかけてきたのはいかにもチャラそうな金髪の男だった。

綾川のように高そうなスーツを着ているのを見ると、こいつもどこか有名な会社の子息なのかもしれない。

だとしてもこんなにチャラそうな人とはできるだけ関わりたくない。

「いえ、不味いのでおすすめはしません」

アイスは名残惜しかったが、できるだけ簡潔に答え、さっさとその場を離れようとした。

「、、、えっ?」

しかし、その人の顔が一瞬引きつったのを見て思わず立ち止まる。

「不味いって、それが?そのピンクのやつが?」

有り得ない、という顔をしたその男の質問に、私は大きく頷いた。

「残念ながら不味かったです」

やはり、私が知らないだけで有名なお高いアイスだったのだろうか?