「ねえ、この料理なに?」

ふと、目の前にあった見たことの無い食べ物の正体が気になって綾川の袖を軽く引っ張る。

「あ?それは、、、」

私の質問に答えようと綾川が口を開いたそのとき、

「湊くんじゃないか?」

と知らないおじさんが話しかけてきた。
これまたお金持ちそうな見た目だ。

「ああ、佐山さんこんにちは」

すると綾川は見たこともないような笑顔でそのおじさんの方を向いた。

知り合いだろうか。

「久しぶりだね。1年前に会ったのが最後くらいかな?また背が伸びたんじゃないか?」

「そう見えますか?嬉しいです!成長期がやっと来たんでしょうかね。あ、そういえばあの商談は上手く行ったんですか?」

「ああ、それに関してはね、、、」

心の中でコイツ敬語使えるのか、、、と思うと同時にいつもとは違う雰囲気の綾川と私の間に大きな壁があるように感じた。

『商談』なんて言っちゃって。

何だかんだで綾川の方が私より大人で物知りなのかもしれないと思うと、少し寂しい気がした。

いつから私は綾川と私を同じ土俵だと思い込んでいたんだろう。

話が盛り上がりだした綾川とおじさんの隣で、居心地が悪くなった私は静かにその場を離れた。