「すごい、、、」

綾川家の豪邸を出てリムジンに乗った数十分後、ようやくパーティー会場であるホテルについた。

泊まったこともないような豪華なホテルだ。

綾川の家で見たような大きな門を通り抜け、その立派なドアの前でリムジンが止まった。

「よし、降りるぞ」

綾川がスマートに私の手を引き、リムジンから降りる。

何気ないことのはずなのにまた私の心拍数は上がった。さっきから私の心臓はおかしい。1度病院に行くべきだろうか？

「なに変な顔してんだよ。今から豪華な料理食えるんだぞ」

私の顔を覗きこんだ綾川にそう眉をひそめられ、慌てて顔を逸らす。

「変な顔って失礼ね。高級ディナーが楽しみ過ぎるだけだし」

「それにしてもお前さっきから、、、」

綾川が何かを言おうとした時、、、

「きゃーーーー！」

聞き覚えのある黄色い悲鳴が耳に入った。

「な、なに？」

思わずその声の方向に視線を向ける。

私のように豪華なドレスを着た同じ年頃の女の子たちが数人、こちらを見てはしゃいでいた。

既視感のある光景だ。

「湊様こっち向いて〜！！」

「会場に入る前に拝めるなんて最高、、」

案の定、彼女たちの視線は綾川に向けられており、当の本人はうんざりしたような顔でそちらを見ないようにしていた。

「気にすんな、全員知らねー奴だし」

綾川は歩くペースを速めて、私も慌ててそれに着いていく。

途中で「隣の人、見ない顔だけど誰かしら、、？湊様の連れ？」 「まさか、、」というような会話が聞こえたが、聞かなかったことにした。

「メイドか何かでしょ」という声には少しムッとしたものの、変に突っかかられるよりはいいかと気を取り直した。