《湊side》

一方その頃の綾川 湊

「この金色のスーツなんかいいと思うんだけどな。どうだ、竹岩」

「勘弁してください、お坊ちゃま。創立記念パーティーですよ。紬様もいらっしゃるのに、、、」

正気かお前、、と言わんばかりの竹岩の視線にムッとする。

「どういうことだよ?ださいって言いたいのか?」

と口を尖らせつつも、俺は紬に幻滅されることは避けたいので素直にキンキラキンのスーツを脱いだ。

「どのスーツが1番俺に似合うんだろうな。俺ほどの男になると何でも似合うから逆に迷うなー」

そう呟きながら大量に並べられたスーツを手に取りながら見る。

「お坊ちゃまにはこれが1番似合うかと」

そう言って竹岩が俺に見せてきたのは、紺色のシンプルなデザインのスーツだった。

「え?それかよ!俺ならもっと派手なもんでも着こなせるだろ?」

こんな地味な服はなかなか着ることがない。それもおめでたいパーティーの場で。紬も来ると言うのに。

「ええ。お坊ちゃまは顔だけは宜しいのでこれくらい渋めなデザインの方がバランスが取れると思いますよ」

「俺は中身も良いけどな!」

聞き捨てならない竹岩の暴言に怒り散らかしながらもそのスーツに腕を通す。

「、、、なかなかいいじゃないか」

鏡に映る俺は当然のことながら、なかなかにイケていた。

これで紬の目も俺に釘付けになること間違いなしだ。

「あとは髪のセットだな! イケイケで頼むぜ!」

竹岩がわざわざ高級な美容院から呼んできた美容師にそうオーダーする。

「おまかせください!」

頼もしい美容師の返事に、さぞかし格好よく仕上がっているであろう数十分後の自分を想像してニヤリと笑った。