「もうすぐ着くぞ」

綾川の声に、ぼーっと窓の外を眺めていた私はハッとした。

「ホテルに?」

「いや、俺の家に寄るのが先だよ。ドレス貸すって言っただろ」

そういやそんな親切なことを言ってくれていたなと思い出す。

「お世話になります、、、」

綾川と竹岩さんに頭を下げる。

ドレスを貸してもらって美味しいものをお腹いっぱい食べさせてもらうなんて、感謝感激だ。

「なんだよ、珍しく素直だな」

綾川が頬を染めてパッと顔を背ける。

お礼言われ慣れてないのかな、御曹司なのに。と心の中で思っていると、

「着きましたよ」

という竹岩さんの声と同時に、車が停まった。

窓越しに大きな門が見える。その奥には見たことないくらい大きくて立派なお屋敷。

「うわあ、、、」

あまりの衝撃に言葉が出なくなる。
いったい、この屋敷で何個のハーゲン〇ッツが買えるんだろう。

こんなとこに入ってしまって、迷い込んだ鼠のようにつまみ出されないかと不安になる。

私みたいな庶民は1度隅から隅まで洗浄して足を踏み入れるべきなのでは、、、?

思わず怯んでしまった私の手を綾川が引いて車を降りる。

こいつ何気によく私の手を触るよなと思いつつ、文句を言える立場でもないので黙ってついて行った。