「お待たせ、綾川!」

待ち合わせ場所では、綾川がいつも通り変装用のサングラスをかけ、高そうな腕時計をチラチラと見ながら愛しい私の到着を待っていた。

「おう」

やっと来たかというように綾川が顔を上げる。

「よし、行くぞ紬!」

そして私の手を取るとそのまま足を踏み出そうとした。

「いやいや、ちょっと待ちなさいよ!」

私は立ち止まると、綾川の手をぐいと引っ張った。

「なんだよ」

「何か言うことあるでしょ?」

「は?言うこと?」

綾川は私を上から下まで眺めて、それから首をかしげた。

「別にないけど、、、あ、もしかして俺をなんて呼べばいいかってことか?たしかにずっと『綾川』呼びだしな!!」

照れたように笑うと、綾川は私の背中をぽんと叩いた。

「湊でいいって言ってんだろ、照れるなよ」