「澪」


都鹿先輩改め、叶先輩が出ていくと、遥人さんに呼ばれた。


「はい」

「そこ、座って」


そこ、とはソファのことだろう。

わけもわからず、私はソファの端っこに座った。


「次の授業もサボろ」


ソファの方に来たから座る……かと思いきや、遥人さんは私の膝を枕にして寝転がった。


「ん……。昼まで寝るから、四時間目終わったら起こして」


現在は三時間目の真っ只中。


三時間目があと10分とちょっと。
10分休憩の後、50分間四時間目の授業をやってお昼休みとなる。


「あの、私が授業に出られないんですが……」

「出る必要ある?」

「ありますよ……」

「いいの。お前は俺の言うことだけ聞いてれば」


そこまで決められては困るのだが。

せめても、と。


「いや、でも、授業には出席したいんですけど」

「お前は、俺のなんなの」


偽りの笑み。

強く出るほうがいいのか。
下手に出るほうがいいのか。

本当に、何を考えてるのか分からない人だ。

求められているものがまるでわからない。


「私は、遥人さんのおもちゃです。ですが、私にも権利というものはあります」

「……へぇ。もっともだね。でも、澪は俺の言うことだけ聞いてればいいよ」


遥人さんはその笑顔を崩さない。


「静かに俺の枕にでもなっててよ」


そう付け加えて、私の太腿を優しく噛んだ。