「ねえ、なんであの茶髪を庇ったの。好きなの」


保健室につくなり、そんなようなことを聞いてきた遥人さん。


「いえ、別にそういうわけじゃ……」

「それに、『澪ちゃん』ってなに? ふざけてんの。他の男と仲良くすんなっつったよね」

「えっ、別に仲良くしてるつもりは………」

「おしおきって、言ったよね」


ダメだ、全然聞いてない。


「しかも、こんな怪我してさぁ。どれだけ俺のこと怒らせる気?」


そして、私をベッドにおろしながら、


「それとも、おしおきしてほしいの?」


そう言って冷たい目で見られる。


「ちがっ………んっ」


突然のキス。


「ごめっ、なさ……ぃ。はるとさ、ん………」

「へえ……。そんなに素直に謝るのは、こういうことしてほしくないってこと?」
 
「んっ、そうじゃ、なくてっ」


遥人さんの手が体育着のすそにかかったとき……

ガラッ


「保健室で盛んな、クソガキ」


若い女の人の声がして、何かが遥人さんの頭に振り下ろされた。


「痛っ………。おい、ふざけんなクソババア」


振り下ろされたのはよく教員が持っているようなバインダーだった。


「えっと………。白崎先生…………?」

「あぁ、澪ちゃんか。怪我?」

「えっと」


保健医の白崎先生である。

その白崎先生のとった行動に衝撃が隠せない。


「おい、無視すんなよ。クソババア。謝れ」

「おい、遥人。春高の美姫とも謳われたこの叔母に『クソババア』だと?」

「あ? 過去の栄光にすがってんじゃねえよ、ババア」


えーっと、え、白崎先生は遥人さんの叔母様?

私の頭は多くの情報で溢れかえり、何がなんだかわからない。


「遥人は教室戻れ。澪ちゃんは私が面倒見とくから」