「はあああぁっ〜♡ 雷人ったらカッコイイ〜。『あいつより俺を選んで。絶対大切にするから』だってぇ〜〜! 一度でいいからあんな素敵な人にそう言われてみたいなぁ」

「はぁ〜。カッコイイのは雷人じゃなくて、俺だろ。ふっ……、相変わらず目ぇ悪いな。普段はBランク以下の男ばかり見てるから見る目がなくなってるんだろうな」


「うっわあ〜っ。見て見て! フォークに苺を挿して来海に『あーんして』だってぇ! 私もあーんしちゃおうかな〜。あーん」

「……っ! お前の口にハバネロでもぶち込んでやろうか……(ドラマに夢中で俺の話が耳に入ってないし)」


「やだやだぁ〜。甘〜い瞳がたまんない! キュン死、キュン死。キュンキュンし過ぎて人類滅亡しちゃう〜っ」



結菜はドラマに夢中で隣のダイニングから水を指してくる日向の声が耳に入らない。
当然、プライドが高い日向は面白くなくなると、ダイニングイスからサッと立ち上がった。

目を輝かせながら両指を組んでうっとりしている結菜に対して、ズカズカとソファ前へ進められる足。
ピタリと止まった瞬間、結菜の両肩をソファーの背面に押しつけて、甘い眼差しと優しい声を降り注がせた。



「どうしたら俺を好きになってくれる?」

「えっ……??」


「お前を独り占めしたい。今から他の男に目が行かなくなるくらい俺色に染めていい?」



結菜は直前までドラマに見入っていたせいで一瞬何が起きたかわからなかったが、ソファーへ突き抜けそうなほど真っ直ぐに見つめている瞳を見た瞬間、顔面から火が吹き出しそうになった。

バックン…… バックン……

急スタートを切った心臓は胸から飛び出しそうなほど激しく暴れている。

ちょっと待って!
頭の中が真っ白で何も考えられなくなった。
いきなり独り占めしたいとか言われても、心の準備が……。
それに、日向の事を好きとか一度も考えた事ないのに。



「えっ……えええっ!! いっ、いきなりそんな事を言われても。こっ、こここ……心の準備が……」



お互いの顔の距離はおよそ20センチ。
あいつとこんなに顔を接近させたのは今日が初めて。

彼の言葉以外入らなくなっている耳。
麗しい眼差しで見つめられ続けている目。
生温かい息が届けられている唇。
そして、触れてもないのに間接的に感じる気配。

変な緊張と妙な雰囲気に巻き込まれてしまったせいか、理性が追いついていけない。
しかし、結菜の身体が石像のように固まったまま赤面状態で目を左右させていると……。