「マジ……かよ……」

「こんな顔をしてるからダメだって言ったのに……。恥ずかしい」


「会いたくて我慢が限界だった」

「……っ私、本当はあんたの親友なんてなりたくない。それより、もっともっと近くがいい。私に幸せを教えてくれたのは、80億分の1のあんただけだから」


「その言葉……」

「あんたの会見、全部聞いたの。どうして私に相談もなしに会見なんてするのよ。そんな事をしたらあんたが傷つくだけなのに。今日のように沢山の記者に囲まれて、ある事ない事書かれて傷つくのはあんたなのに」



結菜は目線を合わせて言うと、左目から大粒の涙がポロッと溢れ落ちた。
そして、右目には次の涙が用意されている。



「ごめん……。お前を守りたかった。それに、会見した事に後悔してない。だって、お前がこうやって会いに来てくれたから」

「私が会いに来たのは、誓約書が無効になってたから。堤下さんから聞いたんだけど、誓約書を破ったならちゃんと言ってよ。あんたに近づいちゃダメだと思って今日までずっと苦しかったんだから」


「そこまで気づかなかったよ。苦しい思いをさせてごめん」

「それに、それにね……。あんたが会見で好きな人だと言ってくれた事が最高に嬉しかった。今日まで気持ちを伝えてなかったけど、私もあんたが好きだから……」



結菜が顔を真っ赤にさせながら胸の内を伝えると、スタートを切ったかのように両目からキラキラと大量の涙が滴った。
それを見た日向は急に現実味帯びてしまい、照れ隠しで口を窄ませながら言った。



「……どれくらい?」

「えっ! 『どれくらい』と言われても……」


「だって聞きたい。リスクを犯して会いに来てくれたって事は、それなりの覚悟をしてきた訳だし」

「わっ……、わかった。うっ……、ゴホン…………。に……24時間365日、あんたの事だけで頭の中がパンパンに埋め尽くされるくらい……かな」


「マジか……。そんなに」

「もう! 意地悪……。女の子の口からこんなに恥ずかしい事を言わせないでよ……」



日向は泣いてる結菜からストレートに気持ちが届けられると、両手を広げてギュッと身体を包み込んだ。
そして、耳元でそっと囁く。



「ばーか。お前が俺様を好きになるなんて100万年早いんだよ」

「……っ!」


「でも、俺様を一途に惚れさせる女は世界でたった1人。お前しかいないから、これからは幸せになる覚悟だけしとけよ」



日向はそう言うと、右手を外して瞼を伏せながら顔を接近させた。
結菜は胸をドキドキさせながら瞳を閉じる。
日向の唇が徐々に近づき、残り2センチまで近づいた。
ーーが、次の瞬間。