「今日って部活あったっけ?」

「え?」

「バスケ部」

「あ、あー、あるけど」



なんだ、そんなことか、と。
張りつめていた糸を外したように丸まった直江の背中。

布瀬もいつもの笑顔になる。



だけど俺には

特定の話題を逸らしたかった。

そんなふうに見えた。





さっきまでの話の内容を忘れたのか、直江がころころと話題を変えていく。

空気はちゃんと元通りになり、気づけば、残り少なくなっていたサンドイッチを口に入れた。




梅野はうどんがあと3分の1程度。

直江は口ばかり動いているせいか、手にはまだふたつのサンドイッチ。


食べることで無言をやり過ごしていた俺は、することがなくなって、ふと、カサカサと音がした方に視線が移る。




「……」


瞬間、胸のあたりが疼いた気がした。




布瀬が動かす手のなか。

そこに転がっているのは、梅野からよくもらうあめだった。