それは、黙っていた俺が発した一言。
少し目を丸くしてこっちを見ている梅野に、やってしまったという気まずさを感じながら口を動かす。
「…そう、言ってたよな? 梅野」
「え……うん」
嘘じゃない。
たしかに聞いたとき、付き合ってはないと言っていた。
ただ、それを第一声にしなくても良かっただろ、と頭で思う。
「そーなんだ、そっかそっか。
まぁ、ふたり中学一緒だし、仲良いの納得だわ。えっと、どこ中だっけ?」
必死で空気を変えようとする直江が、それはもうよく喋る。
そのまま適当に会話しててくれ、と投げやり状態になった俺の耳に、直江、と。
突然、低い声が落ちてきた。
それは、普段穏やかなトーンの布瀬からすると、どこか異質な声色。
…なんだ?
急に無表情になりやがって。
直江もなにか感じとったのか、微かに眉があがっている。