「夜市くん」
なにも答えない俺に梅野が顔を傾ける。
…こいつ、わかってねーのか。
俺が周りの男共から怪しげな視線を送られてること。
そんで、女共は逆に、俺に話しかけた梅野に対して探るように関心を飛ばしていること。
いつもうるさい花音の周りの女がコソコソと話しながら梅野を睨む。
その中心にいる花音は、見下すように俺を見ている気がした。
「…梅野」
「うん?」
「俺、いま、眠いんだわ」
「あ、……そっか。ごめんね、話しかけて。テスト、お疲れさま」
……面倒だ。なにもかも。
対抗心むき出しの男の視線も、梅野があいつらに目をつけられるのも、すべて面倒でしょうがない。
「氷牙」
手を投げ出して突っ伏していた俺の頭上で、今度は梅野とはべつの声がする。
顔だけずらして右目をあげれば、さっきまで女を引き連れていた花音がいた。