「なるほど、このワックス意外とさらっとしてんなぁ」

「自分の髪でやればいいだろうが」

「実験だよ、実験。今月俺、合コン多いから、ばしっとキめないとな」

「俺でやるな!」

「はいはい、おちついてー、深呼吸してー、ゆーっくりゆいちゃん見てー、はい気分よくなるー、そのまま俺に髪いじられててー」




最早なにを言っても無駄な直江に呆れながら好きにさせることにする。

こういうところを見ている男共が、直江は夜市氷牙を扱えると勝手に認識しだしたりもして。



およそ15分後、やっと解放された頭を持ち上げて廊下に出れば、




「…げ」



嫌なやつと遭遇してしまった。

布瀬と顔を合わせたことで今朝の出来事が蘇る。



俺と梅野が付き合ってからは、しばらく布瀬が梅野と話すところを全く見なかった。

まぁ、すぐ切り替えて友達に、とはいかなかったんだろう。


なんとなく触れていいのかわからず、様子を見ていたわけだが、今日の朝、普通に話しているふたりを見かけた。