「あ、の……これ、よかったら、」
「…は?」
思わず追いかけて声をかけてしまう。
絆創膏を差し出しながら視線が合わさった瞬間、心底嫌そうな顔がこっちを向いた。
睨みつけられているのは理解してるのに、顔が歪んでても真波さん可愛いな、なんてぼんやり思う。
「いらないんだけど」
「でも、血が出てるから」
「だからなに? あんたに一番関係ないでしょ」
「…一番ってことはないんじゃないかな、クラスメイトだし」
「うざいっつってんの、いい加減わかれよ!」
廊下に響いた怒号に驚いて肩が跳ねる。
にこにこ笑っていたいつもの真波さんとは正反対の表情が現れた。
「あんたわかってんの? あんたの不倫の噂広めたのは花音だし、氷牙だって花音のせいでクソ男に殴られたの、知らない? 怖いでしょ? 引くでしょ? 気分悪いでしょ? ……わかったら、とっとと消えて!!」
……す、すごい、ここ廊下なのに。
人たくさん見てるのに、こんな堂々としてられるなんて。
内容よりもそっちに謎に感心してしまったわたしに真波さんが「聞いてんの!?」とまた怒る。