「っ、夜市くん…」
「なんだ」
「くすぐったい……」
肩に頬を埋める。膝の上で礼儀正しくまとまっていた指先をちりちりとつついて遊べば、腕のなかで身を捩る梅野が可愛らしく体温を上げた。
「偶然でも会えてうれしーな?」
「っ…」
「あぁ、俺だけ?」
「……わたしも、うれしい」
困りながら笑っている顔をもっと見ていたいと思う自分の意地の悪さは自覚済み。
以前なら、女の表情なんて一番どうでもよかったはずなのに、梅野だと全てが崩れるのは、もうどうしようもない。
「えっ、」
膝上で縮こまっていた梅野が突然声をあげる。
「夜市くん、あれ…」
「んあ?」
「あめ、いっぱいあるけど………わたしがあげたやつだよね?」
「っ、」
まずい、ばれた。
棚の一枠にちょうどよく収まっている瓶。そのなかにある飴は、たしかに今まで梅野からもらったものだった。
「とっておいてくれたの……? あれ、にしては多い…え……もしかして、夜市くん、あめ好きじゃない?」
「…いや、あめというか、甘ったるいのが苦手」