「朝起きたら冷蔵庫になにもなくてね、朝ごはんの食材買いに行ってたんだけど。そしたら、わたし、スーパーに携帯忘れちゃって、後ろから梅ちゃんが追いかけてきてくれたの」


「うめ、ちゃん…」


「かわいーでしょ? それでそれで、荷物とか大変そうだからって車まで運んでくれて、すっかり和んで氷ちゃんの話してたら、もしかして息子さんの名前って、、って氷ちゃんのこと知ってたのよー」




もうびっくり、と母さんが手を叩く。

そしてそこからなぜか喋りが止まらなくなり、ついには学校での俺を聞きまくった母さんは、あれだけ教えなかった怪我の手当をしたのが梅野だったと突き止めたらしい。




「もう、なんで教えてくれなかったの、氷ちゃん。あの時の恩人が梅ちゃんだって」

「……母さんこそ、朝っぱらからなんで梅野を連れてきてんだよ」

「え、だって、朝ごはんまだなら、うちでどう?って聞いたら、梅ちゃん喜んで承諾してくれたもの」




そりゃ断れる性格じゃねーだろ、梅野は。

「おいしいです、このオレンジジュース」と出されたものを褒めながらあたふたしている梅野の感情が汲み取れて苦笑する。




「ていうか、そういうことなら俺起こせよ」

「あら、氷ちゃんのお客様じゃないのよ、わたしがお礼を兼ねて招待したんだから」

「……俺の彼女なんだが、」




さらりと呼吸でもするように低音を落とせば、見開いた3人の眼に囲まれた。