恥ずかしさと撫でられたさを天秤にかけること数秒、見事後者が勝利して、すすす、と夜市くんに近づく。
触れられるほどに距離を詰めれば、ふわりと大きな手が舞い降りてきた。
わさわさ、と細やかに揺さぶる指先に満たされて頬を伸ばせば、「ふは」と。なぜか夜市くんが口を開けて笑っていて。
「わ、笑わないで」
「おまえが急に頭撫でろとか言うからだろ」
「だって…」
憧れたんだもん、少し。
………夜市くんは基本、喜怒哀楽をあまり多くは示さない。
付き合えたことは嬉しいし幸せだけど、もっと夜市くんのこと知りたいし、好きだって言葉もたくさん聞きたい。……わがままかな?
「梅野…?」
寂しさを纏うような西陽が差しかかり、おもむろに夜市くんの背中に手をまわす。
「どうした?」