「直江くん、元気だったね」
「元気すぎて参る」
「ふふ」
チャラチャラしているところはあるが、俺と梅野のことを、たぶん誰よりも喜んで祝福してくれている直江に、ちゃんと感謝してる。
それを全面に出せば、調子に乗ってニマニマした顔を浮かべられるから、言わねーけど。
「夜市くん、手繋ぎたい」
「……勘弁しろ」
「ええ、嫌ってこと?」
「違う(ふいに言われると冷静さが崩れんだよ)」
照れたり、素直になったり。
そういったことに、まだ自分は慣れない。
でもそんなことですれ違うのも嫌だから、梅野にちゃんと気持ちが伝わるように手を結ぶ。
俺を見上げてはにかんだ梅野。
すっと幸せに似た温度が胸の内に広がる。
面倒だった恋愛は、案外いいものだと思いながら、自然と自分も笑っていた。
夜市氷牙、17歳。
────遊び人だった彼は、今ではもう、梅野ゆいという可愛い彼女しか見えないらしい。
_.END._