どうやら梅野は、俺と付き合ってから人気になっている。

夜市氷牙(男からはクズ認識)がいけるなら、俺もいけるはずだ、と。

勘違い男が愚策にも性格の悪さを武器にして挑んでくるものだから、何人か気づいた危なそうなやつには裏で制裁を加えてやった。



「行こっか」

「ん」


荷物を詰め終えた梅野と教室を出る。

すると、隣の教室からぴょこぴょこと直江が顔を出した。




「ゆいちゃーん、今帰り? 今から帰るの?」

「え、あ、直江くん。うん、今から帰るよ」

「そっかそっか。………どう? 氷牙とは」

「へ……えっと…」

「あ、氷牙が怒らせたらすぐ俺に言うんだよ?」


「おい」



いちいち余計なことを言う直江の腕をつつくと、拗ねたような目線を寄越される。




「なんだよー、俺はふたりのキューピッドだぞ。そうだそうだ、ゆいちゃん、氷牙がね、ゆいちゃんと付き合えた日、俺の携帯に初めて、ありがとなって送ってきたの!」

「え、夜市くんが?」

「そう! 俺びっくりして携帯ひっくり返しちゃったよ」




うんうんと、なぜか楽しげに聞いている梅野を引っ張る。「あ、おい、氷牙〜」と腑抜けた直江の声が廊下に響いていた。