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2月中旬、ガヤガヤヒソヒソと話し始める周り。

その視線は、終礼が終わってすぐに梅野の席に向かう俺に注がれている。




「今日も一緒に帰るの?」

「今日もってなんだよ、家近いし、いいだろ」

「わたしは嬉しいけど…」




そう呟く梅野に、がっくしと項垂れる連中が数人。そしてなぜか、ありえないを連呼しながら俺を見る女が数人。




「あそこのふたりがくっついたってマジ?」

「マジみたい。告白どっちからだろ?」

「さあ。でも、夜市くん前と違うよね」

「ね、遊んでた女の連絡先全部消したって聞くし、やっぱ梅野さんが本命だったんだ」

「じゃあ布瀬くんは?」

「最近は梅野さんといないよ、なんか部活に熱中してるってかんじ」

「え〜、じゃほんとに一途になったの? あの夜市氷牙が?」




…─とまぁ、噂され放題である。


若干棘のある俺への言い方は置いといて、ちら、と後ろに視線をまわす。

……問題はこっちだ。




「女神のゆいちゃんが、夜市と付き合うはずないよ」

「でも今、一緒に帰ることに、わたしも嬉しいって言ってた……」

「あー言うな! 俺のゆいちゃんがぁ…」




いつからテメーのゆいちゃんだ、こら。

名前も覚えていないクラスメイトを睨むと、察知した目の玉がくるりと孤を描いてあっちを向いた。