「わたしだけだと思ってたけど……夜市くんも、顔、赤い…?」

「っ、見んな」

「え、なんで、見たい」

「見んなって」



近づいてくる梅野を前に駆け出すと、後ろから足音が俺を追う。

「待ってよ」と言うくせに、梅野は速い足で悠々と追い越して、えへへと悪戯に笑う。

それに俺も笑って追いかけた。










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「なんだ、いらなかったかぁ、これ」



ふたりの後ろ姿を見てふわりと笑う。

片手には、失恋祝いではなく、おめでとうで鳴らすつもりだった小さなクラッカーが握られている。



「ま、道端だと迷惑になるしな」



自分が入る空気ではないと思い、気の利く直江は、やっと叶った友達の想いに喜びながら、寒い道のりをそっと帰っていった。