「俺は、面倒事がきらいだ」
見つめると梅野が不思議そうな顔をする。
「暑い日も寒い日も外出たくねーし、せっかくの休みにわざわざ着飾ってデートだとか、すぐ会いたい会いたいだとか、バカみたいだって………、そう思ってた」
溢れかえる世間の恋人は、なんであんなに楽しそうなんだって。絶対、ひとりの方が楽なのにって。
「けど、梅野になら、学校じゃない日も会いたい。暑くても寒くても、俺が会いに行くことになっても、なんでもいいから、会いたい」
こんなことを思うのは初めてで、未だに気持ちに追いつかないことだってあるけど。
「特別が、欲しくなった」
……おまえのせいだ、梅野。
誰でもいいとか、そんなんじゃなくて、俺だけに向けられる特別が欲しい。
熱を持ちはじめる頬に気づいて、少し驚いたような梅野が俺を見つめる。
「俺がこんなになってんのは、梅野だからで、
…………そういうの、なんでか、わかるだろ」
「…へ、な、なんでか…?」
「っ、好きだからだろ、梅野が!!」
「!」
言い切ってしまえという心のまま、大きな声が出てしまう。
ぱちぱち、とどこかで少ない拍手まで起こってしまい、さすがに恥ずかしくなって顔を伏せた。