前の記憶が駆け巡る。

梅野の話は事実だった。



『どうせまた、女の子でも落とそうとしてるんでしょ。追いかけて楽しんで、自分になびいたら、捨てるんだ?』

『はいはい、そんなとこ』



ボロカス言ってくる周りの印象を否定するのも面倒で、軽く肯定して。



『えー、どんな子なの?』

『いるんだよ、謎の本好きの女が』

『なにそれ、意味わかんなーい』



自分の気持ちに気づいていなかったあの時の発言を梅野が聞いていたなら、俺への印象が悪くなるのも充分頷ける。

そもそも事実、中学の頃は平気で嘘の好意を吐いて、落ちたらさようならという最低行為をしていたわけで。


それなのに自分の口からは誤解した梅野に対する文句が出てくるなんて…。

なんだよ……。

ふざけんなは、俺じゃねーか。




やっと届きそうな梅野の信頼が得られてないことに、どっと焦りが襲ってくる。

どんなに情けなくても、俺らしくなくても、それでももう素直に伝えるしか方法は探せない。